通関Customs Clearance 

4月末、ようやく日本に到着。通関は「公認改造登録」で日本一の実績と信頼を誇るTICの越川さんにお願いしました。僕も同行させて頂き、オーストラリアからの輸入登録に関するノウハウを、一緒に勉強させて頂きました。
保税倉庫でコンテナから搬出されたインターセプターの卵、いやヒヨコかな? は、出航前に水取りぞうさん(室内6個、トランク3個)を車内に設置して頂いたお陰で、カビどころか湿気と無縁のコンディション(タップリ吸い込んでいました)。ボディはうっすらと全体に「オーストラリアのホコリを被っている」のがイイ味で、洗車したくない気分です。

ローダーごとのレントゲン検査で「武器や麻薬などを隠していないか」調べて頂きました。レントゲン検査員に「怪しい液体がこの辺とこの辺に、このくらいの量ありましたので調べますね」と言われ、指定された場所は、半量くらいしか水が入っていないらしいラジエターと、点火コイル、ウォッシャータンク。クーラント半量、ろくに整備されていないことが理解できますが、まぁどうでもよい部分です。

半日かけて通関し、晴れて車体も書類上も「コッチ側のクルマ」になりました。お陰でようやく愛車という実感を、少しだけ感じるようになりました。
日本に持ち込んではいけない物(密輸)ではないので、通関自体は何も問題がありませんでしたが、一番心配していたのは、インボイスに書かれていた車体サイズ。なんと全幅2100mm。あまりピンと来ない人もいるかもしれませんが、この車幅はハンパじゃありません。具体的にどれくらいハンパじゃないかというと…
 テスタロッサ 1980mm
 F50      1986mm
 ヴェイロン  1998mm
 アヴェンタ  2030mm
 エンツォ   2035mm
 ハマ-H2  2062mm
どれか1台くらい遭遇したことがありますでしょうか。「すっごい幅だなー!」と思いませんでしたか?あれよりデカいんです。しかも長いです。
デカい車体の何が心配かというと、積載車に乗らない可能性があるのです。職業柄いろいろなローダーを見ていますが、ケーニッヒコンペティションエボリューション(タイヤ幅計測で2100mm)を運べる、スーパーカー用の4トン車にしか載らないのでは… と危惧していましたが、ホイールがツライチじゃないお陰でギリギリ載せることができました。まあ載ったは良いのですが、ほとんど荷台と同じ大きさ。ハンパじゃありません。

工場まで運んだ後、エンジンを掛けたり色々とチェックしたところ、始動性の良さに驚きました。セルを「キュルルル」と回すことはなく、「キュ」くらいで即座に一発始動します。ただし、クーラントがラジエターの半分くらいしか入っていないだけではなく、水を足せばラジエターキャップが圧力どころか隙間から水が溢れるような物だったりと、色々と笑わせてくれます。この程度…というか、こうなることは想定内です。
実は、エンジンルーム内のパーツは、すべて交換しようと考えていました。エンジン・ミッションを含むすべてです。エンジン本体は、過給して600psどころか800ps以上を「余裕の安全マージン付き」で発生できる、吊しの新品がアメリカで販売されているので、載せ替えようと考えていました。
しかし、インターセプターといえば「フォード351C+トップローダー」。せっかく搭載されているのだから、まずは向き合おうと思います。ピストンやコンロッドを交換することを考えれば、別のエンジンに載せ替えた方が安いのですが、性能で考えた場合351Cは素晴らしいエンジンなので、捨てる手はありません。

ガスレポGas Report 

並行輸入車や個人輸入車を登録する際には、排気ガスレポートという物が必要になります。一般的には、同じ自動車の並行輸入をやっている業者から売ってもらうのがセオリーですが、ファルコンは単純に輸入された個体数が少ない上に、前期・中期・後期があり、それぞれ搭載エンジンが複数存在します。同一の車体+エンジンのガスレポしか使用できないため、これまでに輸入した業者が同じガスレポを持っている可能性が極めて低いのです。なので、ガスレポは新規作成することにしました。
整備やチューニングを始めるよりも先に、ガスレポの取得をおこなう訳ですが、現在の仕様のまま取得できないかとエンジンルームを覗いてみます。
キャブはホーリー。恐らく車輌紹介動画にあった、750ダブルバンパーです。そしてデスビはマロリーのポイント式。キャブは仕方ないとしても、ポイント式デスビには驚きました。外装以外は最安構成だったのか、もしくはポイント式がオーストラリアの定番なのか。
キャブをガスレポ仕様に改造したり、デスビをフルトラに改造して…というのがセオリーなのでしょうが、餅は餅屋らしくフルコンを付けて制御してみようと思います。

とりあえずのガスレポ仕様なので、取り付けるのは会社に転がっていたMoTeC M4という大昔のフルコン。
32ビットのチップを搭載し、OSではなくDOS上で動くプログラムなので、現代のフルコンに負けない処理速度を誇る反面、Windows98以前のPCでしかセッティングができないことや、RS232C端子(USB以前の規格)が必要なことから、現代のノートPCではセッティングが困難になり、製造終了となりました。
イメージ的には、ホーリーのキャブから燃料が出ないようにして、追加したインジェクターから燃料噴射をおこない、点火はイグナイターを追加して、タイミングをコントロールできるようにします。すぐにでも作業に取りかかりたいところですが、会社のファクトリーが御客様の車で一杯なので、とりあえず第二ファクトリーに保管です。

余談になりますが、MoTeC M4というフルコン。20年くらい前に発表された旧式にも関わらず、アイドリング制御やブーストコントロールも含めて完璧なセッティングを追求できる代物です。ただし、先にも書いた通り古いノートPCがなければ設定すらできません。
仮に古いノートPCを入手できた場合でも、wi-fiもLAN端子も付いていないため、ソフトをダウンロードできないばかりか、Win98はUSBメモリを認識してくれません。CDRやフロッピードライブが内蔵されていればマシな方で、それすら無い場合は「当時物の外付けFDD」や「当時物の外付けMO」でインストールする必要があります。現代のパソコンに慣れた目で扱うと「パソコンなのに骨董品感ありあり」で、本当に大丈夫なのか不安になるレベルです。