このスイッチ、ネットオークションなどで販売している人がいるので、現行品なのだろうとは思っていましたが、ようやく正体を掴みました。
これは自動車用として販売されている物ではないのですが、今でも新品の入手が可能です。
引いてオン、押し込んでオフ。単なるスイッチなので、買ってきて付けるだけ。
問題はスーパーチャージャー側です。
スイッチを押すとスーパーチャージャーが停止。
スイッチを引くとスーパーチャージャーが作動。
劇中では、スイッチオフの状態で「スーパーチャージャーが停止」していますが、ルーツブロワー型スーパーチャージャーは、停止すると空気が通過できなくなります。つまり、エンジンが空気を吸えなくなるのです。
同じスーパーチャージャーでも、遠心型(ターボと似た形状の物)は停止状態で空気が通過しますが、インターセプターに搭載されている「上から吸って下に送るタイプ」のようなルーツ型とリショルム型は、停止すると空気が通過しません。このため、近年のブロワー後方から吸入するタイプの物には、停止状態でも空気を通過させるバイパスバルブが組み込まれています。
インターセプターは、スロットルと燃料噴射装置が一体なので、スーパーチャージャーが停止している間は、空気だけではなく燃料もエンジンに入らなくなります。
このことから、このスーパーチャージャーは完全なイミテーションであることが理解できます。撮影に使われた劇用車は、すべて中身がカラっぽのスーパーチャージャーを、電動で回していたのです。
劇中でマックスがスイッチをオン/オフさせつつ走るシーンは、何度観ても違和感がないどころか、心を熱くさせてくれます(MAD MAX2で、ワクワクしていた犬がスイッチをオフした途端、ショボーンとするシーン。マックスが目で「ごめん」と言ってるように感じるのは僕だけでしょうか)。
この「現代の技術では不可能な事が当たり前のようにできる」システムを搭載している車輌=インターセプターは、まさに未来のクルマです。
この事実を知り、僕の中のマッドマックスは「近未来バイオレンスアクション」ではなく、SF映画であると認識が変わりました。
リアル インターセプターは、この38年前のSFを現実に変えるプロジェクトです。
インターセプターのミッションは、MTなのかATなのか。ファンの間でも議論が絶えないようで、AT派の方々は「マックスのイエローインターセプターがATだったから、ブラックもATだ」「怪我した足でクラッチ踏めるのか」などと考えているようです。その理由は理解できますし、そのように感じる事も判ります。しかし、僕はMTだと考えています。
MADMAXの劇中で、マックスはスーパーチャージャーをオンにした直後に、シフトダウンします(シフトレバーを前に)。さらに、サイドターン後にも1速に落として加速(シフトレバーを前に)、その後もシフトアップするシーンが続きます。仮にあれがATセレクターだったとすると、レバーを動かす方向の説明が付きません。
(気になるのは、こうやって比較すると判る通り、シフトノブの色が異なることです。MAD MAXでは黒、MAD MAX2では詳細不明の少し赤っぽい物が使われています。)
これはファルコンXB GTに搭載された、トップローダーというミッションのシフトノブ。スクリーンショットの画像が暗くて申し訳ありませんが、比較するとそっくりです。
ATではないと考える根拠は他にもあります。これはファルコンXBのパンフレット画像ですが、ATのセレクターレバーは、レバー自体が太く、劇中のレバーはMTの物だと理解できます。MTのシフトレバーをATのセレクターとして使っているのでは?という疑問は、構造をよく知っている方々なら理解できると思いますが、ない話です。不可能ではありませんが、簡単な作業ではないため、わざわざ換装する理由が分かりません。
「怪我した足でクラッチが踏めるのか」は、とても大変だったと思いますが、マックスはあの状況で「足が痛くてクラッチが踏めないから復讐を断念」するようなヘタレではないでしょう。…など、すべて僕の勝手な想像ですが、マニュアルミッション(しかもトップローダー)搭載が正しいと思っています。