ベース車

フォードファルコン

インターセプターのベースとなったのは、フォード・ファルコンの三代目です。
正確には三代目の中期型にあたる、1973年式のXBファルコンGT。

ファルコンは、4ドアセダン、2ドアHT、バン、ワゴン、ユーティリティ(ピックアップトラック)と、色々なボディがありました。この他に、限定モデルのジョン ゴス スペシャルという特別仕様もあります。
前期型がXA、中期型がXB、後期型がXCというモデルで、劇中に登場するブラックインターセプターは、中期型のXBです。
日本では「シルビア(S15)」など、型式は自動車マニアだけが知ってるカッコ内の数字ですが、ファルコンに限らず、オーストラリア車の多くは型式が車名の一部。ファルコンXBと言えば、オーストラリア全国で通用します。

人気の理由は、このモデルからフォードオーストラリアで設計・生産されるようになったこと、オーストラリア初の自国設計車であること、レースでの大活躍など、まさにオーストラリアを代表する自動車だからです。
マッドマックスで採用されたことで人気に拍車が掛かりましたが、そもそもオーストラリアで人気があったことこそが、採用の理由でもあります。
(当初予定していたマスタングよりも安かったからという部分も大きいですが)

レプリカ制作に際し、どこまで似せるか、どこの忠実度や再現度を重要視するのか。
ここが最も重要だと思います。
外装だけではなく、内装も劇中とソックリそのままになっていないとダメ!
という人は、前期・中期がベスト。後期型はダッシュボード形状が異なり、メーターパネルが一新されています。
外装だけソックリなら、内装が多少違っていても気にしない人は、後期でも大丈夫です。

後期をベースにして、後から中期の内装に変更したい…となると、オーストラリアでも3万ドルくらいの費用が掛かるそうなので、ベース車選びは慎重に。
また、日本の旧車同様、外装ビッカビカで中ズタボロの個体も多数ありますので、本当にご注意ください。これはベース車に限らず、完成車でも気をつけた方が良いです。
ちなみに本国オーストラリアでは、HT以外のモデルをベースにしている人もいます。

完成車の入手

ベース車ではなく、完成したインターセプターを丸ごと購入してしまう方が、なにかと話は早いです。部分的に気に入らない場所があっても、イチから製作することを考えれば圧倒的に費用も価格も短縮できると思います。

海外に目を向けると、たまにアメリカやヨーロッパで売られていることがありますが、軽く1千万円オーバーです。2017年3月、オーストラリアのebayに出品された窓もないボロボロの個体は、520万円で落札されました。
5~6年前までは、よくオーストラリアで手放す人がいましたが、怒りのデスロード公開後は、需要が供給を一気に上回りました。

かくいう僕も、那須PSガレージ様メイキングリポートをリアルタイムで更新待ちしていた頃(本当にワクワクしながら読ませて頂きました)から、世界中の情報を調べ尽くしてはいたものの「英語も話せないし現実的な金額ではない」と、断念していました。
本気で手に入れようと決断したきっかけは、極爆MAD MAXでインターセプターへの情熱が再燃したことです。27年ぶりの公開で、インターセプターが復活。しかも、2で自爆したインターセプターを30年近くかけて修復したのか! 凄い、僕にそこまでの情熱が無かったことが恥ずかしい!…と、単純バカなので猛烈に刺激を受けてしまったのです。「インターセプターの無い残りの人生」と「インターセプターのある余生」。どちらを選択するかかは、その時に答えが出ました。


※極爆MAD MAX:立川シネマシティで上映された、「MAD MAX怒りのデスロード 極上爆音上映」のことです。


那須PSガレージ様のように、オーストラリアやアメリカのビルダーに依頼して製作してもらう方法もあります。
その場合は高額な製作費を前払いするのが前提です。しかも、完成までに数年間は当たり前。厚い信頼関係が無ければ難しい上に、彼等がこだわる「見た目をどれだけ劇用車に近付けるか」と、僕がこだわりたい「ギミックをどれだけ劇中車に近付けるか」には大きな隔たりがあります。
ハードウェアとソフトウェアの両方を新たに考える必要があることから、これは日本じゃないと無理だろう…と判断し、完成車の入手を断念。自作することにしました。

ベース車の購入

XA~XCの、どれを買うべきか。
これは、正直どれでも良いと思います。なにせ40年落ちな上に、状態も個体によって異なるからです。
XAが一番希少価値が高く、XB、XCの順に安くなります。
本物と同じXBを選択したいところですが、二代目ファルコンの2ドアハードトップは希少車。販売を目にすること自体が少ないため、良い物を見つけたら即決断する勇気が必要です。
現地の売買スレッドでは「XB買います5万ドル!」「XB極上車なら10万ドルで買います!」という告知が結構増えました。
これだけ需要がある中で、「お、2ドアが意外と安く売ってる!」という物を発見しても、それが掘り出し物であるハズがありません。何か問題がある個体のはずです。
いくら雨や湿度が少ないオーストラリアであっても、鉄は錆びます。屋外放置すれば、紫外線で内装の樹脂はダメージを受けます。美味しい話など、そうそうありません。

かなり長い期間チェックを繰り返していますが、見た目だけピカピカで、中身ボロボロという物が本当に多いです。
数年前までは5万ドル以下で購入できましたが、いまやXBの綺麗な個体は10万ドル以上、XAなら15万ドル以上と言われています。
極上車となれば、XCでも8~9万ドルが相場です。
(すべて2ドアHTの話です。4ドアは安値キープです)
ここまで価格が高騰している理由は、単純に個体数が減少していることと、僕を含む「買えるうちに買っておこう」と考える40~50歳台の人が多いからだと思います。また、純正部品が枯渇していることもあり、内装に痛みがある個体は交換できないという弱点もあります。

ダッシュがヒビだらけのXBでもいいのか、極上のXCがいいのか。
安いポンコツをベースに製作しても、インターセプターの形をしたポンコツが完成するだけです。展示物を作るのでしたら不動車でも良いと思いますが…
「ファルコンを購入して外観をインターセプターの形にする」
「40年落ちの旧車を新車状態なり現代化させる」
「600psのパワーに仕上げる」
「スーパーチャージャーをオン/オフさせる」
「公認改造登録に必要な各部の合法化」
以上の項目は、多少重複する内容こそあるものの、まったく別のコストと手間が掛かります。恐らくプロに丸投げで依頼すれば、3000万円以上するでしょう。
この金額は、フェラーリのV8やランボルギーニV10の新車と同じ価格帯です。僕には到底支払えませんが、オンリーワンの価格と考えれば「安い」と感じる人もいるでしょう。
予算が限られているのであれば、どこをどの程度妥協するかです。

ファルコンには限定車もあります。左はXBのジョン ゴス スペシャルで、右はXCのモデル末期に登場したコブラです。どちらもプレミアムプライスになっているため、わざわざインターセプターのベースにする人は少ないと思いますが、保存状態の良い個体や、ハイクラスのオーナーに向けたレストアが施されている良個体を目にします。
海外のインターセプタービルダーの多くは、安く入手した放置車両のような物をベースにすることが多いようなので、ボロい個体からレストアするのに抵抗がある人や、予算に余裕のある人は、こういう個体から製作するのもアリかもしれません。
ボロいのを安く買って、コツコツ直せば…という考えは通用しにくいです。国産旧車と違って、日本にはパーツ自体が存在しません。本国でも希少になっているほどです。
このため、覚悟の無い見切り発車は、自殺行為に近いです。

ちなみに、中期・後期を問わず、さまざまなグレードがあります。
直6搭載モデルだったり、ボンネットやリアフェンダーのダクトが付いていなかったり。
その辺を気にしないのでしたら、好きな個体を選んで大丈夫です。
「本物ソックリまで似ていなくても、なんとなく普通の人にバレない程度の外観に仕上げることができる」「とにかく安くしたい」という人は、マスタングをベースに製作するという選択肢もあります。
(ファルコンと並べれば全然違うのでバレますが)
ちなみに72マスタングのボロい個体なら、ファルコンの1/10くらいの車輌価格でアメリカにゴロゴロしています。

※追記※
2018年2月5日現在、ジワジワと値上がっていたファルコンの相場が、ここにきて急上昇中です。
ボロボロでレストアが必要な個体を除く、とりあえず綺麗な個体に関しては、前期(XA)、中期(XB)共に10万ドルを超えました。状態の良いXA GTは20万ドル、状態の良いXB GTの4ドアでさえ8万ドルです。
日本車で言うところのRX-7(FD型)スピリットRや、スカイラインGT-R(R34型)VスペックII Nürに相当するモデル末期の限定車、コブラ(XC)に至っては、40万ドルや50万ドルで実際に売れています。
ここまで車両価値が高くなってしまうと、「ボンドカーのレプリカが欲しい。よし、1億円のトヨタ2000GTを買って、屋根を切ってオープンカーを作ろう」と、同じくらい色々な意味で、インターセプターのレプリカ製作が困難になってきますね。
提案としては、直6エンジン搭載の、とりあえず動く「そこそこの程度の車両」を安く購入。車体価格を安く抑えておき、どうせエンジンやミッションは載せ替え(オーバーホールよりも安い)なので、V8でも何でも、好きなエンジンに交換するのが、安く仕上げるための最短だと思います。

日本での入手や登録

日本国内には、ほとんど入っていません。これは、オーストラリア産の自動車を日本に持ち込むのが非常に難しいからです。このため、ベース車のファルコンはオーストラリアで探す以外に方法がありません。アメリカやヨーロッパでたまに売っていますが、圧倒的に高価です。
ただし、ベース車ではなく完成車でしたら国内に数台あります。僕は、日本国内でインターセプターを放置されている方に熱烈なラブコールを送ったことがありますが、「直す予定は無いが手放す予定も無い」と断られ、断念しました。
これほど特殊なクルマを買う程の愛がある人は、簡単に手放さないのが当然です。
別のページに書きますが、僕や知人の知っている範囲だけで、日本国内には8台のファルコンベースのレプリカがあります。当然知らない個体も存在すると思いますので、最低8台です。9番目になれると良いのですが、いつになることやら。

特に70年代の旧車となると、車輌の詳細を示すVINコードが世界標準ではなく独特な表記となるため、自動車の輸出をしていないオーストラリアからの個人輸入で、正規にナンバーを取得するのは困難を極めます。
オーストラリア・フォードに製造証明書を発行してもらえば話が早いのですが、残念なことに、フォードは去年(2017年現在)オーストラリアから撤退しました。
オーストラリアの車検証やプレートの打刻では、製造年月の証拠になりません。これがダメな場合、現行車として新規登録という形になりますが、現在の排ガス検査基準は想像を絶するほどハイレベル。「7気筒殺して1気筒にしても無理」なレベルです。1/8どころか、1//800くらい排ガスを綺麗にする必要があります。
当時物の車輌であるという国際的な証明があれば大丈夫ですが、国際的な証明など普通に考えて素人には不可能。そこで、正規公認では日本一の信頼と実績を誇る、TICグループに相談。通関だけではなく、ハミ出たスーパーチャージャーとサイド出しマフラーの完全合法化まで、まるっと引き受けてもらうことになりました。

購入後の注意

オーストラリアやカリフォルニアで、ほとんどサビが無かった極上車でも、日本に来たらすぐサビだらけ…という笑えない話が本当にあります。日本の湿度は驚異的なので、防錆対策は必須です。

しかし、それ以上に注意しなければならないのは、電気関係です。
外装や内装、エンジンルームなど、見ただけで判る部分はともかく、電気配線は40年物であることが当たり前です。
一番繊細な作業をすると言われている日本のカーショップであっても、旧車のレストアで電気配線を引き直さないケースは多いです。
ましてや海外の旧車の場合、家庭用のオーディオ用配線を使ったり、ヒューズやリレーの使い方が判っていないDIY修理も珍しくありません。
中には完璧な作業をするプロも居ますが、そんなプロが手を入れた個体は、街の中古車屋さんに流れてくることはありません。
実際、僕のインターセプター友達が、オーストラリアの個人オーナーの車輌を見に行ったところ、1個のヒューズから複数の電気配線を引いていて、すぐに飛ぶためダッシュボードにスペアのヒューズが山のようにあった。という、恐ろしい状態だったそうです。
まだヒューズを使っているだけマシかもしれませんが、こんなレベルの知識では、他の部分に何があるか判りません。

「古い配線」や「間違った知識で修復した配線」は、「いつまで経っても直らない不調」の原因になるだけではなく、車輌火災の引き金にもなります。ただ、「配線の引き直し」というのは、言うほど簡単ではなく、新調したヒューズBOXやリレーの配置場所も含めて、手間と時間が相当掛かります。
僕は、見える部分だけ綺麗過ぎるくらい綺麗で、見えない部分や面倒な部分は手を抜きまくる作業が嫌いです。むしろ、見える部分が多少ボロくても、見えないところまでキッチリと手を入れたいタイプです。

幸いなことに21世紀の現在は、ヒューズとリレーを使わずに、簡単に全配線を引き直すことができるシステムが売っています。引き直し作業が簡単になることと、高い信頼性が手に入りますので、これと日本製のミリタリースペック配線を使用して、「もしも…」の可能性を遮断します。

インターセプターの外観

インターセプターのエアロパーツは、数社から発売されています。ただし、安い物はペラペラです。
物が同じかどうかは分かりませんが、数件のエアロ屋がペラペラな物を格安で販売しています。
オーストラリアのゴードン氏(2017年3月現在移転のため休業中)が製作した物や、アメリカのディー氏(オーストラリア製よりも数段上と豪語している)が製作する物は、高価なだけあって良いと聞きます。
ただし、物の善し悪しは、使う側の主観で大きく変わります。安く買ってペラペラを裏打ちで補強したり、納得するまでパテで成形するのも自由です。

ちなみに、どれを買ってもポンと付きません。
仮にボディにピタリと当たるほど出来が良い形状だったとしても、バンパーの形状に合わせて切った角材を溶接してフレーム製作したり、ルーフやハッチに固定するスポイラーは、リベットスポットで固定するのと同時に、雨水浸入対策のコーキングが必須です。そしてさらに、劇中車に似せるためには、スムージング処理+αの成形も必要です。
オーバーフェンダーもリベット固定後にパテ処理となりますが、ワイドなタイヤが接触する部分の逃がしなど、フェンダー側の加工が必要です。
僕にはこのような作業をするスキルが無いため、ボディワークのプロに依頼しようと考えています。

インターセプターのカラー

真っ黒ではなく、ツートンです。
海外ではブラック オン ブラックと呼ばれていたりします。ボディサイドは上がツヤあり、下はツヤ消しで、境界にツヤ消しのストライプが入ります。
ボンネットも同様のツートンになっています。