日本国内にあるマニュアルミッションのインターセプターで、僕の知る限り現在公道を走っているほぼすべての個体が、ミッションを換装しています。僕のインターセプターは、まだミッションが壊れたわけではありません。が、もう我慢の限界です。
トップローダーという4速MT(映画でも同じ)を搭載していますが、クロスしている訳でもロングな訳でもない、5速ミッションから5速を抜いただけのレシオです(つまり4速直結)。高速道路で巡航していると回転数が無駄に高く、水温や油温も上がりがちになってしまいます。排気量とも相まって燃費も非常に悪い上に、うるさくて会話もできません。
そこに追い打ちを掛けるように、シフトの入りが猛烈に悪いフィーリングや長大なシフトストロークなど、操作性が最悪。高額な費用を投入して修理したとしても、ハイパワー化した後の強力なトルク変動には耐えられそうにないので、現代のミッションに換装することにしました。
ちなみに、トップローダーをオーバーホールして、普通に高速巡航できるレシオにファイナルを交換するという案もありましたが、それをやると1速の発進が2速発進並みになってしまい、いちいち気を遣ったり、クラッチの減りも早く、良い選択とは思えませんでした。
意を決してTREMEC TKO600という5速MTに換装を決意。TKO600は、アメリカのスポーツカーに標準搭載されてきた定番中の定番で、600馬力くらいなら余裕で対応してくれる上に、シフトストロークも少なく、スポーティなフィーリングが自慢です。
ファルコン用というか、ラストV8用の換装キットが数社から販売されていたのですが、物によっては色々と不都合があります。キットとは名ばかりの「ボルト穴は自分で加工して空けてください」に始まり、色々な不都合を「自分で解決しなければならない」物、「組み合わせる部品が不明で途方に暮れそう」な物など、換装キットは地雷原の様相です。
かくいう僕も、危うくアメリカ製のキットを買いそうになりました。詳細は省きますが、オーストラリア フォードは右ハンドル。アメリカ製は左ハンドルなので、アメ車用は付かないのです。
さんざん吟味したお陰で、購入したキットは至れり尽くせり。細かいパーツまで全部揃っていたお陰で、何の問題もなく搭載することができました。
プロペラシャフトと嵌合する部分が年式的に合わなかったため、「現代のミッション」と「古い純正デフ」を接続するプロペラシャフトは海外発注しました(海外には、サイズ指定するだけで安くパパッと作ってくれるプロの業者があるのです)。
ミッションだけ強化してデフが旧式のままだと、後々フルパワーに化けた際に、真っ先にデフが砕ける可能性があります。こういう場合に必須となるのが、Ford 9”デフ。1000馬力オーバーのドラッグレースマシンでも定番で、アメリカの誇る超強力なアイテムです。もちろんファルコン用も売っているだろうとネットで調べまくりましたが、何故かぜんぜん売っていません。さんざん調べた物の1軒しか販売しているサイトがない。これは何かおかしいと思い、Mad Max 40thツアーで知り合った現地の仲間、ロイド氏に聞いてみたところ、ファルコンの後期型(XB後期モデルとXCの、リアがディスクブレーキのモデル)は、標準でFord 9"を搭載しているとのこと。要するにディスクブレーキ付きのホーシングは、Ford 9"が入っているそうです。
XB中期型以前のオーナーの間では、後期型のデフを換装することでFord 9"化するのが定番。なので(流用が当たり前すぎるため)、Ford 9"のキットは存在せず、僕のファルコンはFord 9"が搭載されているため、交換を考える必要が無いのです。
…という訳で、TKO600と純正デフの間の各部を何度も計測して図面を作成し、ペラシャフトを海外発注。問題なくミッションとデフが接続されました。
そんな作業が終わった頃、富山県射水市のラジオ局からマッドマックストークの出演依頼があり、ミッションの慣らしを兼ねて現地までドライブ。
トークその1 トークその2
TKO600は、走りの面では驚くほど素晴らしく、苦労して交換した甲斐がありました。ただし、問題が何も無かった訳ではありません。
問題点1…というか、ある意味当たり前なのですが、まったく違うメーカーの40年も新しい設計の物を搭載しただけあって、シフトレバーの位置が違います。ニュートラルの位置が旧ミッションの1速あたりなので、そこから1速に入れようと思うと結構遠いです。
問題点2…位置的にレバーの位置が遠くなっただけではなく、国産スポーツカー並みにシフトレバーが短いため、上体を起こさないと1速まで届かない。元々のレバーは長い上に運転手方向に曲がって伸びていたため、体感的には25~30cmくらい遠くなりました。
問題点3…ある意味ではこれが一番の問題なのですが、シフトレバーの形状が変わったために、赤いスイッチやトップローダー用シフトノブが装着できなくなってしまいました。インターセプターレプリカを製作する上で、このシフトレバーは論外という結論です。気に入らないなら、レバーだけ旧ミッション用を使えば…と行きたいところですが、残念なことに旧ミッションはレバー自体がネジ込み式、新ミッションは横からネジ2本で固定する方式なので、流用することができません。
とりあえずモヤモヤする部分はあるものの、シフトフィーリングや快適な高速巡航、高速域の伸びの良い加速は大満足。山梨県岡谷市で5月に開催されたMad Maxファンミーティング(日本中のインターセプターやバイクが集結しました!)、名古屋ノスタルジックカーフェスティバル(京都のブラックインターセプターと名古屋のイエローインターセプターと僕の3台&グースレプリカの展示でした)など、各地のイベント往復で長距離ドライブを楽しみつつ、ミッションの慣らしは完了。5速巡航だけではなく、適度な渋滞で各ギアしっかり回しました。
ちょっと遠いシフトレバーにも慣れてきましたが、このままでは赤いスイッチも付かないし、トップローダー用シフトノブも付かない。ネットで世界中探しましたが、TKO600用シフトレバーとして販売されている物は、劇中の雰囲気と違う物ばかり。
無いのであれば、作るしかありません。
要するに
「トップローダー用シフトレバーを流用」
「取り付け位置を後方に下げる」
これを何とか実現すれば良いのです。
数種類のアイデアを出して実際に図面を引き、図面上であれこれ悩んだ末に、運転中にガタが出たり外れたりしない信頼性まで考えた、シンプルな物に辿り着きました。強度を考えて素材はスチールです。
自社工場の旋盤などを使い、手作業で製作しようと思っていたのですが、SNSで「誰か鉄の端材ありませんか~?」と質問をしたところ、M's MACHINE WORKSさんが、声を掛けて下さいました。M's MACHINE WORKSさんは、その名の通りマシニング加工のスペシャリスト。普段から仕事でワンオフの削り出し品などをお願いしています。
しめた!と、図面持参で遊びに行き、その場で削り出してもらいました。その間わずか30分の早業です。僕が手作業で削っていたら何日掛かっただろうと思うと、足を向けて眠れないほどの大感謝です。
取り付けるのはシフトレバーの根元にあたる部分になるため、ゴツい部品がシフトブーツと干渉することもなく、最高のポジションでシフトチェンジできるようになりました。
で、もうひとつの問題点だったシフトノブ。トップローダーのノブは華奢な樹脂製で、本来ノブとレバーの間に♀ネジのウエイトが挿入されているハズなのですが、いくら探しても中身が手に入らないため、とりあえず太さが同一の耐圧ホースを突っ込んでいました。これ、旧ミッションのフィーリングが最悪だったことも相まって、カッチリしていないのが非常に不快でした。せっかくシフトレバーなので、ノブに挿し込むウエイトを自作することにしました。ウエイトなので重いことが重要ですが、手作業なので削りやすさも重要。無難なところで真鍮を選択し、旋盤で削りました。
ここまで本当に長かったのですが、普通にシフトチェンジできるようになった幸せを噛み締めつつ、ドライブを楽しんでおります。
いよいよ2019年のMad Maxコンベンションが始まります!
今年の目玉は、Mad Maxのラスボス・トーカッター役であり、フューリーロードのラスボス・イモータンジョー役の、ヒュー キース バーン氏の来日です。
さらにグース、ジョニー、カンダリーニ、ヒューマンガス、エースのオリジナルキャストも来日するという、涙ものの内容。そして11月の14日から17日まで、4日連続でさまざまなイベントが行われるという、40周年の名に恥じない展開。
この中でも注目は、17日に「ふじさんメッセ」で開催されるMMcon2019 新富士。オリジナルキャストが勢揃いするのはもちろん、日本中からブラック&イエローインターセプターやMad Max系バイクが勢揃い。
そしてそして、なんとなんと、僕のインターセプターも展示して頂けることとなりました。2016年に筑波サーキットのコンベンションに足を運んでから3年。遂に僕のインターセプターもここまで来たのかと思うと感慨深いです。シフトレバー関係の作業が色々と終わった矢先ですが、せっかく展示して頂けることになったので、内外装合わせて、数ヶ所のモデファイを始めようと思います。
このサイトを御覧になっている皆様、11月17日、ふじさんメッセに来られる際は、会場で是非僕にお声を掛けて下さい。
イベントの詳細は以下アドレスです!
http://www.macleod.jp/blog0001/archives/1251